マンガ「島守の記」

マンガ『島守の記』が生まれた経緯

荒井退造を顕彰しようとする動きが結実した一 つが、マンガ『島守の記』です。

2003年、島田叡と荒井退造を描いたノンフィクション 『沖縄の島守 内務官僚かく戦えり』(田村洋三著、中公文庫) が刊行されました。 その3年後、栃木県宇都宮市在住の元教職員・室井 光氏が書店で同書を手にしたことで、栃木県でも荒 井退造を顕彰しようとする動きが高まります。 室井氏は、荒井 退造の生まれ故郷である清原村(現、宇都宮市)出身であり、 彼についての話をたびたび耳にしていたからです。
やはり清原村出身で室井氏と旧知の荒井俊典氏(NPO法人 「菜の花街道」代表)を中心に顕彰活動が始まりました。 これに共鳴した退造の母校・宇都宮高校の齊藤宏夫校長は2015 年、沖縄を訪れ、「島守の塔」の管理にあたってきた 「島守の会」の島袋 愛子氏の案内で、県庁・警察部壕などゆかりの地を見学。
帰郷後、栃木県立の60高校に退造の事跡を紹介するメールを送 信したのです。
これに呼応したのが、真岡工業高校の小林綱芳校長でした。
小林校長は、菅野光弘教頭や、地歴公民科の小柳 真弓・学科 主任と相談、生徒向けの教材作りに取り組むことになったので す。小栁教諭の発案で、若い世代に伝わりやすいようにと、マ ンガという形式を取ることとなりました。作画に当たった渡周子氏は、小柳教諭の大学時代の同期生です。
先にあげた『沖縄の島守 内務官僚かく戦えり』や、報道ドラマ『生きろ』取材班が取材成果を書籍にまとめた『10万人を 超す命を救った沖縄県知事・島田叡』(ポプラ新書)、そして退 造の長男である荒井紀雄氏が自費出版した『戦さ世の県庁』を 参考に、小栁教諭がシナリオを作成、それをもとに渡氏が作画 するという分担でした。
こうして2015年9月15日、『島守の記 沖縄警察部長 荒井退造の記録』が完成、生徒たちに配布されました。 その翌 年、NPO法人「菜の花街道」によって「まんがで学ぶ「疎開 の恩人」 荒井退造おきなわ奮戦記』と改題刊行。そして今回、 新たに渡周子氏によって彩色され、リニューアル刊行されるこ とになったのです。
ちなみに、沖縄、兵庫、栃木における島田、荒井両氏の顕彰 活動の広がりは田村洋三著 『沖縄の島守を語り継ぐ群像』(悠 人書院)に詳しく書かれています。
近年、島田叡と荒井退造の顕彰はますます盛んになってきま した。2021年には、前述のTBS報道ドラマ『生きろ』 スタッフだった佐古忠彦氏の監督作『生きろ 島田叡 戦中最 後の沖縄県知事』が放映されました。2022年には劇映画『島守の塔』(五十嵐匠監督)が公開されます。
今回、リニューアルされたマンガ『島守の記』も含め、これ らの作品を通じて、戦争や平和、沖縄についての理解が深まる ことを願います。 (悠人書院・福岡貴善/記)

マンガ「島守の記」は、沖縄県内の各書店、神戸市のジュンク堂書店三宮店、栃木の落合書店各店および悠人書院のサイトにて発売中!